その都は、最も空に近い場所にある。
 天上の神々が住まう天空に最も近い場所。
 だからその都に生きる人々は、誇りを持って言うのだ。
 この都は、空(くう)の都だと。
 酒場を出た彼は、夜風の中をゆっくりと歩いていた。
急ぐわけでもなく、足音も立てず滑るような足取りで。
 口許には軽い笑み。そこだけ空気が違うようにさえ見える。
 アイーシャとエシャールには、血の繋がりはない。風の月に
なろうかという頃、城壁に寄りかかっていたエシャールに、
水汲み帰りのアイーシャが声をかけたのだ。
 
 アイーシャはそれまで、子守や水汲みをして生活していた。
 
 真夜中。
 エシャールは人の気配で目が覚めた。
「お前のために周りが動くとでも思っているのか?浅はかな」
 感情ひとつ籠もらない、エシャールの声。
 その翌日から、エシャールが酒場に通うのを止めた。もちろん
アイーシャは大喜びである。
 夕飯の支度を始めたアイーシャの近くで、エシャールはようやく剣の
手入れを始めた。
 雪の月に入ると、空の都の人々は新年の準備に追われる。雪に閉ざさ
れる分、他の都よりも早めに準備を始めるのだ。
 突然エシャールの機嫌が悪くなった理由がわからず、アイーシャは慌てた。
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