漣の都への旅が始まった。日に日に口数が少なくなっていくエシャールを、
アイーシャは心配していた。
 エシャールの顔色が、日に日に優れなくなっていく。アイーシャもそして執事も心配でたまらなかったが、何も言えない日々が続いていた。
『海の都での記憶がほとんどない…何故だ。漣の都のことを考えると吐気さえ覚える…』
 エシャールが旅を始めた頃よりも、漣の都は寂れてしまったようだ。
 震える背中を黙って見ていたアイーシャだったが、そのままにしていたらエシャールが消えてしまいそうで、思わず背中から抱きしめた。
 抱きしめたまま、エシャールは続ける。
 ウィンディアを走らせながら、エシャールは別れた時の妹を思い出していた。
「間に合ってよかった…」
 しばらく無言だったエシャールが突然口を開いた。
 しばらく優しくアイーシャと見つめ合っていたエシャールだったが、執事に向かって小さな袋を差し出した。
「長い間、本当にお世話になりました。…私には今、このような形でしかお礼ができませんが、どうか納めてください」
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