屋敷に戻った翌日から、エシャールの執政官としての日々が始まった。
 レットの足音が遠ざかると、エシャールは筆を置いて執事を軽く睨んだ。
 アイーシャはひたむきで、健気だ。ただひたすらエシャールを愛して生きている。その一途さには、執事も絆されている。
 そこに間が悪く、リディアが連れて来た子供達が駆け込んで来た。執事はエシャールの瞳にしまった、と思ったが、遅かった。
「リリス」
 執事の声は、低く、冷たかった。
 護衛官長レットの命令で、3人の配下が漣の都に来ていた。例の廃屋の調査である。
 各地を見て回るという当初の目的はどこへやら、泉の執政官は今日もセアラのお相手である。
 セアラがじっと足先を流れて行く水を見ている。だがその表情はどこか穏やかだ。リューラスは満足げに見上げていた。
 雪の月に入り、聖都も慌ただしくなってきた。巡礼の数が少しだけ減り、皆冬支度を行い、新年の儀式に備えるのである。
 しばしの静寂の後、天帝の感情を抑えた声が書院に響く。
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