新年を祝う花火を、ふたりは今年も屋根の上で眺めていた。
 屋根から下りたエシャールは、アイーシャを背負って屋敷に入った。
 だからといって、すぐにいなくなるような真似はしなかった。執政官がこの屋敷に
いる間は、すぐに追っ手がかかるだろう。
「では行ってくる。留守を頼むよ」
 そして、その夜。エシャールはアイーシャを背負い、荷物を抱えて厩舎に入った。
水の都から乗ってきた馬が繋いであるのだ。ちゃんと面倒をみてくれていたらしい。
 エシャール達が夜通し馬を走らせて城門を目指している頃、執政官の屋敷は
大騒ぎであった。新年祝賀一色だった屋敷はエシャール不在で空気が一変していた。
 執政官家の妻からエシャールの残した手紙を託された下男が執政官一行に
追いついたのは、彼が屋敷を出た翌朝だった。
 人払いをした碧の都の執政官と盗賊団の頭領は、部屋の奥で話し合っていた。
 ようやく碧の都の城門を抜けたエシャール達は、時間を気にしない旅を始めていた。
 蹄の音は、この家の亭主とエシャールが戻ってきたことを教えていた。
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