ジュリアスは皇帝に向き直り、言った。
 臨時で通された控えの間で、リスティとロイドはひどく居心地のよくない時間を過ごしていた。皇女と同席というのもそうだが、さっきの皇后の言動をどうとも説明がしがたかったのである。
 グレイスはしばらく何も言わなかったが、ジュリアスが煙草を1本吸い終える頃、ようやく口を開いた。
 今、皇帝ステファン7世からカストラル帝国全臣民に向けて、御言葉がくだされようとしていた。
「…」
 最後尾でジュリアスとダインのやり取りを見ていたロイドは、ダインに遅れを取ったことが素直に悔しかった。まだまだダインには敵わないことを思い知らされる。
 大広間の扉が開き、室内の視線が一斉にジュリアスに集まる。
「…ご母堂」
 不意に皇帝がクレスティアを呼んだ。
 すぐに執務室に行くのかと思ったが、ジュリアスは建物には入らずにグラウンドに向かった。
 扉の先には、先客がいた。ジュリアスは目を細め、それが誰であるのか気付く。
 まだ何かあるのだろうか。ロイドはいつものようにノートを片手に扉を開けた。
「…ああ、閑静なところに建った。入れる家具はあなたに任せるから、次の完全休暇の時にでもミストに来るといい。…ああ、わかっている。ああ。了解した。…では」
 総司令部へ向かおうとしていたダインだったが、途中の廊下でロイドの声が聞こえて足を止めた。
 それから10日程が経って、ロイドが朝のコーヒーを出しながら楽しそうに報告してきた。
「こ、こんな格好で大丈夫でしょうか、閣下」
 第五元帥府から車で15分ほどの場所に、その屋敷は建っている。すでにダインが手配した警備兵が豪奢な門を開いた。
 自分も中を見てくるという皇太后を見送り、ジュリアスは外に出ていた。煙草を吸える僅かな時間なのである。
 二日間の完全休暇が明け、遂に第五元帥府が始動する日を迎えた。
 第五元帥府の落成式典から数日後、ジュリアスに陸軍から客が訪れた。
 帝都に着いたジュリアスは、第一元帥府に赴いた。
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