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2005.11.01
蒼の都の物語・8
夕飯の支度を始めたアイーシャの近くで、エシャールはようやく剣の
手入れを始めた。
手入れを始めた。
白夜の剣。
何故自分が持っていたのか、それさえわからない。
もうどこの街角かさえ忘れたが、目を開けると野良犬が水溜りの水を
飲んでいるのが見えた。手を伸ばすと、ペロリと舐められた。
その生暖かい感触は、今でも覚えている。自分は生きているのだと
ようやく実感した。手の中の剣に気づいたのもその時だった。
よほど強く握り締めていたらしく、なかなか右手から離れなかった。
ゆっくりと指をはずしていきながら、大切なことを思い出せないこと
に気がついた。そのことに気付いても、特に何の感動も絶望もなく、
雨の中、どんどん濡れていく足元を見ていた。返り血を浴びているらし
い衣だけが、彼の過去を知っているようだった。その衣も、すぐに買い
換えて捨てた。
それ以来、この剣だけで生きてきた。賞金稼ぎが主だったが、個人的
な依頼も受けてきた。
殺し、以外を。
その依頼は大抵酒場で受けてきたため、毎日酒場に通っていたのであ
る。目的がわからないとアイリスに言ったのはそのためだ。
今は、目的があるからいいのだが。
「エシャール、ご飯にしましょ」
「ああ、わかった。すぐに片付ける」
アイーシャの傍にいるという目的が。
何故自分が持っていたのか、それさえわからない。
もうどこの街角かさえ忘れたが、目を開けると野良犬が水溜りの水を
飲んでいるのが見えた。手を伸ばすと、ペロリと舐められた。
その生暖かい感触は、今でも覚えている。自分は生きているのだと
ようやく実感した。手の中の剣に気づいたのもその時だった。
よほど強く握り締めていたらしく、なかなか右手から離れなかった。
ゆっくりと指をはずしていきながら、大切なことを思い出せないこと
に気がついた。そのことに気付いても、特に何の感動も絶望もなく、
雨の中、どんどん濡れていく足元を見ていた。返り血を浴びているらし
い衣だけが、彼の過去を知っているようだった。その衣も、すぐに買い
換えて捨てた。
それ以来、この剣だけで生きてきた。賞金稼ぎが主だったが、個人的
な依頼も受けてきた。
殺し、以外を。
その依頼は大抵酒場で受けてきたため、毎日酒場に通っていたのであ
る。目的がわからないとアイリスに言ったのはそのためだ。
今は、目的があるからいいのだが。
「エシャール、ご飯にしましょ」
「ああ、わかった。すぐに片付ける」
アイーシャの傍にいるという目的が。
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