アイーシャはそれまで、子守や水汲みをして生活していた。
 
 子供が一人で暮らすことを心配して、引き取ろうかと申し出て
くれる人もいたのだが、アイーシャはその申し出を断った。
 その代わりにと、水汲み等の仕事をまわしてもらい、生活して
きたのだ。
 ところが、エシャールからそれらをやめさせられてしまった。
声を掛けて連れてきて以来、彼はそのまま居ついてしまった
のである。そして居候をしておいて、彼は言ったのだ。
『子供に養われたくない』と。
 それでは生活できないと反論したが、エシャールが見せた
所持金を前にして、黙らざるを得なかった。
 エシャールの財布の中には、それまでアイーシャが見たことも
なかったような金貨まで混じっていた。彼女の驚いている
顔を見て、エシャールが笑った。『お前は正直な子だな』と。
 そして数日前には、少しは女の子らしくしろと、髪飾りを
買ってくれた。
 こんなに満たされた気持ちになれたのは、いつ以来だろうか。
遠い昔に両親と過ごした日々以来か…。
 エシャールと過ごす時間は、アイーシャの寂しかった年月を
ゆっくりと埋めていった。
 何処かに行くときにはスッと手を差し出して並んで歩いて
くれる。台所に立っていて振り返ると、それに気づいてこっちを
見て微笑んでくれる…。
 伸ばした手が空振りしない幸せを、アイーシャは感じていた。
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