陸軍詰所から、セイジェル家まで車でそんなにかからない。帝都大通りを抜けて、瀟酒な貴族屋敷が立ち並ぶ一角に、その広大な屋敷はある。
 豪華な造りの門の両脇には門番が立っている。今だに門番を立たせているのはこのあたりでも伯爵家以上の家柄だろう。昔はどこの屋敷にも門番がいたと聞く。
「これは…若様…。あ、いえ、公爵様。ようこそいらっしゃいました。すぐにお取り次ぎを」
 門番は後部座席でいつものように不機嫌そうなジュリアスに深々と頭を下げて門を開けた。車寄せまで行くと、門番からの報せを受けた執事が玄関を開ける。
「ジュリアス様!…公爵様、ようこそおいででございます。クレスティア様にすぐにお取り次ぎをいたしますので」
「…ああ…じい…。ご老体は、おいでか」
 軽い咳払いの後、ジュリアスは執事に言った。意外そうな顔で執事が頷くと、恐らくアドラールがいるであろう場所、書斎へと足を向けた。
「ジュリアス?」
 2階の廊下から、クレスティアの声が聞こえてきた。ジュリアスは駆け下りてきた母に微笑み、腕を広げた。
「母様。お久し振りです」
「もう…あなたはいつも突然で…。どうしたの?わざわざお屋敷まで来るなんて…」
 母の頬に口づけ、もう一度微笑む。
「ちょっと侯爵に用がありましてね」
「…何のお話なの?母様には、言えないこと?」
「ああ、まあ…。真相がわかればお話しすることにもなると思いますよ。別に喧嘩をしに来たわけではありませんから、ご心配なく。…じい、書斎だな?」
「あ、はい。左様で」
 ジュリアスはクレスティアを抱きしめて、マントを翻した。後に続いたロイドとヴェスティもそれぞれクレスティアに会釈して書斎へと向かった。
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