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2008.05.24
眠れない夜を紡いで・202
書斎に入るのは、実は初めてである。場所はもちろん知っていたが、アドラールのテリトリーである書斎は、決して踏み入れてはならない場所だった。
ジュリアスはノックもそこそこに、アドラールからの返答も待たずに扉を開けた。不機嫌そうなアドラールが椅子ごと振り返り、そこに立つジュリアスに瞠目する。
「…どういうつもりだ、ご老体。こんなことをして、何の自己満足だ」
ヴェスティをアドラールの眼前に突き出して、ジュリアスは傍らのソファに座った。ロイドはいつもどおり、ジュリアスの背後に立つ。ここが一番落ち着くのである。
「ジョナサン、誰にも気付かれるなとあれほど…」
「問いに答えていただきましょうか、セイジェル侯。そこのヴェスティが捕まったのは、陸軍や私の部下、そして私を見くびった結果です。どうしてこんなことをしたのか、説明してください」
アドラールがヴェスティを詰ろうとしたが、ジュリアスはそれを許さない。睨み合いがしばらく続く。
「…今回の皇女殿下の御降嫁を、臣民のひとりとして、帝国貴族の当主として、喜んでいるからだ」
「近衛兵だけでなく、陸軍も警護にあたっているのです。わざわざかき乱すような真似をして、本気でグレイスを守るつもりがおありなんですか」
「なかったらこんなことをわざわざ頼みにいったりしない。皇太后陛下の大切な孫娘である皇女殿下を、お守りせねばならんと思ったからだ」
皇太后ヴィヴィエ・アルスラと、今も繋がっているのだろうか。皇太后はアドラールのことを初恋の君だと言っていたが…。
「このヴェスティに、皇太后陛下と孫である私に知れぬようにと言ったそうですね。孫?誰が?」
煙草に火をつける。
「私は一人娘の恥なんでしょう?セイジェル姓も返上したじゃないですか。母様の幸せのためにこの屋敷も出たでしょう?孫ですって?今更?」
畳み掛けてきたジュリアスから、アドラールは決して目を逸らさなかった。それが尚更癪に障った。
「すまなかった…」
耳を、疑った。それは一緒にいたロイドもそうだった。
「許してくれとは、今更、もう言えぬ。祖父と思ってくれとも言わぬ…。だが、私に出来ることはさせてほしい。そう思って…やったことだ…」
ジュリアスが苛ついているのが背後からでもわかる。ロイドはどうしようかと焦った。その空気を感じたのか、ジュリアスの苛立ちが増した。
「勝手な!!…私には母しかいないんですよ。母には両親がいたかもしれないが、私にとっての肉親は母だけです。私はこの家と、生涯関わりたくないんだ。大体あなたは…」
煙草を銜えたまま、サーベルに手をかける。ジュリアスがアドラールに歩み寄り、それを慌ててロイドが止めようと動いたところで、扉が開いた。
「…どういうつもりだ、ご老体。こんなことをして、何の自己満足だ」
ヴェスティをアドラールの眼前に突き出して、ジュリアスは傍らのソファに座った。ロイドはいつもどおり、ジュリアスの背後に立つ。ここが一番落ち着くのである。
「ジョナサン、誰にも気付かれるなとあれほど…」
「問いに答えていただきましょうか、セイジェル侯。そこのヴェスティが捕まったのは、陸軍や私の部下、そして私を見くびった結果です。どうしてこんなことをしたのか、説明してください」
アドラールがヴェスティを詰ろうとしたが、ジュリアスはそれを許さない。睨み合いがしばらく続く。
「…今回の皇女殿下の御降嫁を、臣民のひとりとして、帝国貴族の当主として、喜んでいるからだ」
「近衛兵だけでなく、陸軍も警護にあたっているのです。わざわざかき乱すような真似をして、本気でグレイスを守るつもりがおありなんですか」
「なかったらこんなことをわざわざ頼みにいったりしない。皇太后陛下の大切な孫娘である皇女殿下を、お守りせねばならんと思ったからだ」
皇太后ヴィヴィエ・アルスラと、今も繋がっているのだろうか。皇太后はアドラールのことを初恋の君だと言っていたが…。
「このヴェスティに、皇太后陛下と孫である私に知れぬようにと言ったそうですね。孫?誰が?」
煙草に火をつける。
「私は一人娘の恥なんでしょう?セイジェル姓も返上したじゃないですか。母様の幸せのためにこの屋敷も出たでしょう?孫ですって?今更?」
畳み掛けてきたジュリアスから、アドラールは決して目を逸らさなかった。それが尚更癪に障った。
「すまなかった…」
耳を、疑った。それは一緒にいたロイドもそうだった。
「許してくれとは、今更、もう言えぬ。祖父と思ってくれとも言わぬ…。だが、私に出来ることはさせてほしい。そう思って…やったことだ…」
ジュリアスが苛ついているのが背後からでもわかる。ロイドはどうしようかと焦った。その空気を感じたのか、ジュリアスの苛立ちが増した。
「勝手な!!…私には母しかいないんですよ。母には両親がいたかもしれないが、私にとっての肉親は母だけです。私はこの家と、生涯関わりたくないんだ。大体あなたは…」
煙草を銜えたまま、サーベルに手をかける。ジュリアスがアドラールに歩み寄り、それを慌ててロイドが止めようと動いたところで、扉が開いた。
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