ジュリアスの予測は多分正しいのだろう。彼の予測がはずれた試しがない。だから間違いなく共和国軍はこの時間を利用して撹乱にやってくるはずだ。
 ロイドもその点については全く異論はない。
 だが。
「あの…レーヴェンローデ閣下…」
「何だ」
 どうして、艦橋にジョーンズ中将が連れて来られているのだろうか…。
 それも、つい今しがたジュリアスが連れて来いと命じたのだ。コーヒーのおかわりを命じられて、入れて戻ってきたらそこにジョーンズがいたのである。
「閣下、指示終わりましたが…。ああ、ジョーンズ中将をお連れになったんですね」
 情報官に指示を終えたダインが戻ってきて、特に驚いた風もなく頷いた。
「え…だからなんで…その…」
 自分一人が状況を把握できていないことがもどかしい。ジュリアスはロイドのそんな様子を見兼ねて、言った。
「共和国軍が撹乱に来るということは、帝国軍籍の艦船に見せかけたものを用意してくるということだ。見分け方を知っているのは、ジョーンズだけなんでな。教えてもらうことにした。もちろん交換条件を提示してな」
「あ…ああ…そういうことなんですか…」
 やっと状況が飲み込めたロイドは大きな溜息をついた。
「爆薬を積んだ無人の艦にレジオノーラを傷つけられてはたまらんからな。…まあ、この女神がそこらの爆薬で傷つくようなことはまずないんだが、共和国軍がどんな爆薬を開発しているのか、残念ながら掴めていない部分もあるから。用心も兼ねて、ジョーンズに協力を依頼した。今回捕捉した、彼の直属の部下については全員無傷で帰すことを交換条件にしてな」
「そうでしたか…」
 そう答えてジョーンズを見やると、彼は特に異議を唱えたい顔をしているわけでもなく、ジュリアスの言葉に小さく頷くだけだった。ジュリアスの配慮なのだろう、縄で縛られてはいなかった。全く逃げる素振りを見せない。これもジョーンズの作戦ではないのかとほんの少しの疑念がロイドの頭の片隅にあったが、それは言わずにおいた。そんなことはジュリアスはわかっているはずだ。
「ところで…」
 ジュリアスはジョーンズに向き直った。
「貴殿を奪還するつもりが…共和国軍にあるのかどうか…。貴殿にはわからぬだろうか」
「まさか…」
 その言葉が信じられないとでも言うように、ジョーンズは首を横に振った。
「旗艦が沈んで、捕捉されたのだ。第一、私を捕捉したのが氷の司令官となれば、手出しをしてくることはあるまい。無理な話だ」
「だが…無線を傍受していれば、貴殿が生きていることはわかるはずだ。それに…レジオノーラは出撃しているが、セイジェルという名は傍受できなかったはず。貴殿を捕捉したのが氷の司令官でなければ、来る可能性はあるんじゃないのか?」
「それはない。いくら上層部が愚かでも、昨日からの作戦が氷の司令官のものであることくらい、想像がついたはずだ。それがわかっていて、私を奪還するなど、有り得るはずが…」
 そこまで言ったところで、ジョーンズの顔が引きつった。
『もしかしたら…。あいつなら、来るかもしれない…』
 ハウラー。同期のあいつなら、あるいは…。
「レーヴェンローデ公、見分け方を…説明したい」
 ならば尚更、自分を奪還などさせられない。相手は氷の司令官。間違いなく、やられる。大事な親友を、失うわけにはいかない。
 それがたとえ…味方を売ることになったとしても…。
「…聞こう」
 ジュリアスはジョーンズの言葉が途切れたことには触れず、足を組んだ。
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