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2005.10.31
蒼の都の物語・6
「お前のために周りが動くとでも思っているのか?浅はかな」
感情ひとつ籠もらない、エシャールの声。
感情ひとつ籠もらない、エシャールの声。
「美しい女が言い寄ってきて、それがどうだというのだ。
私はお前を美しいとは思わぬし、抱こうとも思わぬ」
エシャールはアイリスを射抜くように見据えた。その言葉に
アイリスはもう絶句するしかなかった。
「お姫様の眠りを妨げるなよ。…帰れ」
月が銀色の光で照らす中、アイリスは独り取り残された。
その瞳に、怒りの色をたたえて…。
そしてアイーシャは、二人のやり取りを聞いていた。
正直、エシャールがアイリスを受け入れるのではないかと怖くて
仕方がなかった。アイリスは確かに美しい。彼女に惚れた男も
数多いと聞く。今は酒場女に身を落としてはいるが、元は豪商の娘
だとの噂もある。
もし、エシャールがアイリスに惹かれるようなことがあったら…。
怖くてたまらなかった。やっと訪れた満ち足りた日々を、失うのか。
せっかく出会えたエシャールを、失ってしまうのか…。
そう思うといてもたってもいられなくて、酒場に通うエシャールの
後をつけては角で待っていたのである。
だが。
エシャールはたった今、アイリスを振った。うれしくてたまらな
かった。アイリスには悪いと思ったが、この幸せを失いたくなかった
のだ。
遠い昔両親を失ってから、ようやく訪れたこの幸せを…。
アイリスを追い返して家に入ると、アイーシャの気配がした。
影が動いている。エシャールは目を凝らして寝台の方に問いかけた。
「アイーシャ?起きているのか?」
近寄ってみると、アイーシャが寝台の上で蹲っている。
「どうした?怖い夢でもみたのか?」
アイーシャを覗き込もうとすると、突然抱きつかれた。拒む理由は
どこにもない。エシャールはしっかりと抱きとめた。
「泣いて…いるのか…?」
肩のあたりがしっとりしてきた。何て哀しい泣き方をするのだろう、
この子は。声も出さずに、ただ静かに涙を流すだけなんて…。早く
大人になるために、泣き方も、忘れたのだろうか。
「エシャール…」
「うん?どうした?」
差し込む月の光に、泣き濡れたアイーシャの顔が照らされる。
エシャールは内心ドキリとした。
「どこへも…行かない?」
今までに聞いたどんな女の声よりも、艶っぽい声だった。
エシャールはその声に、この少女の真実を垣間見た気がした。
「ああ…。どこにも行かない。ずっとアイーシャの傍にいる」
それは、遠い未来に続く約束。
きっと気が遠くなるほどの昔に誰かが決めた運命。
記憶を失くした自分にようやく生きる意味が与えられた。そんな
気がしていた。
私はお前を美しいとは思わぬし、抱こうとも思わぬ」
エシャールはアイリスを射抜くように見据えた。その言葉に
アイリスはもう絶句するしかなかった。
「お姫様の眠りを妨げるなよ。…帰れ」
月が銀色の光で照らす中、アイリスは独り取り残された。
その瞳に、怒りの色をたたえて…。
そしてアイーシャは、二人のやり取りを聞いていた。
正直、エシャールがアイリスを受け入れるのではないかと怖くて
仕方がなかった。アイリスは確かに美しい。彼女に惚れた男も
数多いと聞く。今は酒場女に身を落としてはいるが、元は豪商の娘
だとの噂もある。
もし、エシャールがアイリスに惹かれるようなことがあったら…。
怖くてたまらなかった。やっと訪れた満ち足りた日々を、失うのか。
せっかく出会えたエシャールを、失ってしまうのか…。
そう思うといてもたってもいられなくて、酒場に通うエシャールの
後をつけては角で待っていたのである。
だが。
エシャールはたった今、アイリスを振った。うれしくてたまらな
かった。アイリスには悪いと思ったが、この幸せを失いたくなかった
のだ。
遠い昔両親を失ってから、ようやく訪れたこの幸せを…。
アイリスを追い返して家に入ると、アイーシャの気配がした。
影が動いている。エシャールは目を凝らして寝台の方に問いかけた。
「アイーシャ?起きているのか?」
近寄ってみると、アイーシャが寝台の上で蹲っている。
「どうした?怖い夢でもみたのか?」
アイーシャを覗き込もうとすると、突然抱きつかれた。拒む理由は
どこにもない。エシャールはしっかりと抱きとめた。
「泣いて…いるのか…?」
肩のあたりがしっとりしてきた。何て哀しい泣き方をするのだろう、
この子は。声も出さずに、ただ静かに涙を流すだけなんて…。早く
大人になるために、泣き方も、忘れたのだろうか。
「エシャール…」
「うん?どうした?」
差し込む月の光に、泣き濡れたアイーシャの顔が照らされる。
エシャールは内心ドキリとした。
「どこへも…行かない?」
今までに聞いたどんな女の声よりも、艶っぽい声だった。
エシャールはその声に、この少女の真実を垣間見た気がした。
「ああ…。どこにも行かない。ずっとアイーシャの傍にいる」
それは、遠い未来に続く約束。
きっと気が遠くなるほどの昔に誰かが決めた運命。
記憶を失くした自分にようやく生きる意味が与えられた。そんな
気がしていた。
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